2011年7月18日

決勝戦 杉内潤 VS 高田雅博

東京の福生にすんでいるという杉内。
普段はMOでマジックをしているらしく、昨日今日と紙マジックをすべく千葉へと来た。
昨日もTOP8に残っているところからMOでの練習の成果が伺える。

対する高田は「リミテッド対構築比9:1」というぐらいのリミテッドジャンキー。
リミテッドの9が生きているらしく、スイスラウンドも含めて危なげなく決勝へとたどり着いている。

現実での練習量と、MOのデジタルでの練習量、上回るのはどちらか。

杉内:白赤
高田:青黒赤

Game1
高田、ダイスに5連敗中との事。

勝った杉内は先手を取り《雪花石の魔道士/Alabaster Mage》からスタート。
対する高田は《ゴブリンの付け火屋/Goblin Arsonist》《縞瑪瑙の魔道士/Onyx Mage》と動く。
戦闘をはさんだ後高田はおもむろに《困窮/Distress》。

公開された杉内のハンドは

《炬火のチャンドラ/Chandra, the Firebrand》
《真面目な身代わり/Solemn Simulacrum》
《石角の高官/Stonehorn Dignitary》
《正義の執政官/Archon of Justice》

目がくらむほど高カロリーなハンド。
この中から高田は《炬火のチャンドラ/Chandra, the Firebrand》を選択。
当然返しに《真面目な身代わり/Solemn Simulacrum》をプレイする杉内。

ここから壮絶な押収が始まる。

高田が《漂う影/Drifting Shade》《骨砕きの巨人/Bonebreaker Giant》を出せば
《火葬/Incinerate》、《ギデオンの法の番人/Gideon’s Lawkeeper》《正義の執政官/Archon of Justice》と展開。

このままでは4/4飛行に叩き潰される高田は《破滅の刃/Doom Blade》を《正義の執政官/Archon of Justice》に。
黄泉の国へのお供に《骨砕きの巨人/Bonebreaker Giant》が付き添う。

杉内は失ったアドバンテージを少しでも取り戻すべく《グレイブディガー/Gravedigger》で《漂う影/Drifting Shade》を回収。
《火の玉/Fireball》で《ギデオンの法の番人/Gideon’s Lawkeeper》を処理しにかかるとこれを《力強い跳躍/Mighty Leap》でかわす高田。
逆に《忘却の輪/Oblivion Ring》で墓を荒らす不届き物を消し去る。

終始杉内ペースで進んでいるように見えるが、全ては高田の手の上。
除去が尽きたと見た高田、満を持しての《業火のタイタン/Inferno Titan》!!

その後も杉内は解答を求め最善手を指し続けるのだが、
神話レアの火力はその努力すら笑いながら焼き払った。


杉内 0-1 高田


Game2
さて、Game1を落としてしまった杉内だが、実は筆者は準決勝で杉内に当たり敗北している。
この時から一貫して杉内は先手を選択し続けている。
「シールドは後手」がセオリーと言われるが、それを無視しての先手。
その理由が空きあらかになる。

このゲームでも杉内は先手でゲームを開始、《ギデオンの法の番人/Gideon’s Lawkeeper》でライフを削り始める。
クリーチャー1体だけでは意味を成さないため、高田は2ターン連続で展開。
杉内は《火の玉/Fireball》で待ってましたと一気になぎ払う。
さらに場を決定付ける《炬火のチャンドラ/Chandra, the Firebrand》!!

場を盛り返すべく《ルーン傷の悪魔/Rune-Scarred Demon》を出す高田だったが
《炬火のチャンドラ/Chandra, the Firebrand》のコピー能力で《チャンドラの憤慨/Chandra’s Outrage》をコピーして悪魔を祓う杉内。
戦闘の後《投げ飛ばし/Fling》を打ち込んで星をイーブンに戻した。


杉内 1-1 高田


Game3
高田が後手を選択したため3度目の先手を得た杉内。
先手の利を生かし《業火のタイタン/Inferno Titan》が出る前に畳み掛けたい杉内だが
痛恨のダブルマリガンを喫し、土地が1枚で止まってしまう。
高田の初動が遅いのも助けとなり、何とか2、3枚目の土地を引き込んだ杉内だったが、
《困窮/Distress》での安全確認の後繰り出される《業火のタイタン/Inferno Titan》の前になす術も無く崩れるのだった。


杉内 1-2 高田


高田優勝おめでとう!!
決勝戦 有田隆一 VS 吉森奨

決勝戦、戦う前の勝敗予想は吉森の負け。
なぜか?
PTQにて決勝までいくものの、いつもそこで負けてしまう。
萩原が1没の帝王なら、吉森は3没の申し子なのだ。
しかし、運や偶然だけでPTQの決勝まで毎度毎度残れるだろうか。

否。マジックはそこまで甘いゲームではない。
3没の申し子は優勝の夢を見るか。


吉森の3没記録をさらに伸ばしにかかるのは有田隆一。
プロツアーサンデー進出などの経験を持つ、古豪である。
筆者は前回の記事で有田を「マジックよりトークが巧い男」書いたが
それはトークよりマジックが下手、という意味ではない。
マジックの腕も確かだが、トークの腕はもっと凄いということである。

巧みな話術を是非とも見せていただきたいところである。


使用デッキ
吉森:徴兵バント
有田:青白コントロール


game1

後手の吉森が《貴族の教主/Noble Hierarch》からスタート。
バントの基本動作かつ最速をにおわせる、コントロールにすれば嫌なスタートだ。

有田も《永遠溢れの杯/Everflowing Chalice》で同じように加速を見せ、この有田の加速で吉森は考えさせられる。

吉森の手札は《貴族の教主/Noble Hierarch》《水蓮のコブラ/Lotus Cobra》
《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》
《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant》とあり
《水蓮のコブラ/Lotus Cobra》から《貴族の教主/Noble Hierarch》と超加速することも可能だが、
もし有田の手札に《審判の日/Day of Judgment》があると一瞬で負けへと転がっていくため、警戒する必要がある。

結局吉森は《水蓮のコブラ/Lotus Cobra》をプレイするに留まり、次のターンに《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant》。
《水蓮のコブラ/Lotus Cobra》に翼を与えて有田のライフを削り始める。

この《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant》は有田の《忘却の輪/Oblivion Ring》で退場するが、
吉森は《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》を送り込み、手札を充実させた後、2枚目の《貴族の教主/Noble Hierarch》を出して《水蓮のコブラ/Lotus Cobra》で攻撃。

有田のライフが折り返し地点を迎えてきたところで《審判の日/Day of Judgment》がクリーチャーをなぎ払うが、プレインズウォーカーは場に残り続ける。

結局この《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》が吉森に《悪斬の天使/Baneslayer Angel》等後続を与え続け、
さらに有田がマナフラッドに見舞われたこともあり、申し子が優勝に王手をかけることとなった。


有田 0-1 吉森



game2
ノータイムでキープした吉森に対して有田はやや笑いながらキープ。
《前兆の壁/Wall of Omens》でドローを進めた後《未達への旅/Journey to Nowhere》連打で吉森の《水蓮のコブラ/Lotus Cobra》《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary》を消す有田。
続いて有田は《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant》をプレイ、吉森に《否認/Negate》を使わせる。

有田に消費させられた手札を今引きの《思考の泉/Mind Spring》で補充する吉森、次のターンにさらなる補充を目指して《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》をプレイするが
これは有田の《否認/Negate》に阻まれる。
吉森は有田に回答を迫り続けるべく《最高の時/Finest Hour》をプレイ、《貴族の教主/Noble Hierarch》で攻撃して有田の《前兆の壁/Wall of Omens》を討ち取る。

回答を迫る吉森に過不足なく《忘却の輪/Oblivion Ring》で答える有田、吉森が攻められないと見て

「安心と信頼のジェイス!!」

《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》を場に出す。

2ターン後に《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant》を吉森が引き当てたことで、安心と信頼の《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》は砕け散る。
有田と入れ替わりで安心と信頼の《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》を出した吉森、手札を補充してさらなる安心と信頼確保に《ギデオン・ジュラ/Gideon Jura》をプレイ。

が、返す有田のターン《天界の列柱/Celestial Colonnade》と、吉森と交代で手に入れた《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant》の加護を受け
大きくなった兵士トークンの攻撃を受けて砕ける安心と信頼の《ギデオン・ジュラ/Gideon Jura》。

次のターンには《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》が砕ける。

場に出ては砕けていく安心と信頼。
正直どこまでが安心と信頼なのか、そもそも本当に安心と信頼があるのか判断しかねるところである。

しかし今度こそ安心と信頼か?有田の場に2度目となる《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》がでてくる。

着々とアドバンテージを重ねるジェイスを見る限り、今度は本当に安心と信頼だったらしい。
有田がゲームを奪い返し、吉森の耳元に3没の足音が近づいてきた。


有田 1-1 吉森


game3

徴兵バントは所謂「ブン周り」デッキである。
最高の動きをとったときは他者の追随を許さない速度で対戦相手のライフを0にする。
しかし、ブン周りデッキというのは得てして不安定かつ脆いもので、第一波を凌がれると大抵は後が続かずジリ貧で負けていく。

最初の一太刀に全てをかけるデッキ、それがブン周りデッキである。
そんな在り方を体現したような吉森の3本目の動きが

2ターン目:《水蓮のコブラ/Lotus Cobra》

3ターン目:《水蓮のコブラ/Lotus Cobra》、フェッチランドの起動から《バントの魔除け/Bant Charm》で《前兆の壁/Wall of Omens》を除去。

4ターン目:フェッチランドの起動から素で《エルドラージの徴兵/Eldrazi Conscription》!!

滅殺2が決まり、有田のパーマネントはわずかに土地2枚。
これをブン周りといわずして何を言おう。
これで吉森の勝ちは決まったように見えるが、吉森の表情は勝利を確信していない。
上でも述べたが、この攻撃は非常に脆く、例えば《流刑への道/Path to Exile》《未達への旅/Journey to Nowhere》
果てはセットランドからの《忘却の輪/Oblivion Ring》でいとも簡単に解決されてしまうのだ。
第一波を交わされたら負け、それを表すように吉森の手札は最早残りカスしかない。

人事を尽くして天命を待つ吉森、有田の手札からは――

何も、なかった。


有田 1-2 吉森

吉森WIN!!
吉森優勝おめでとう!!
決勝戦
萩原紀幸 VS 三原槙仁

ごく最近、念願だったプロツアーへの参加果たした萩原紀幸。
残念ながら2日目出場は成しえなかったが、得てきたものは大きかったという。
GP仙台では2日目に残り、公式の記事でもフィーチャーされている。
今後の活躍にますます期待が高まるプレイヤーだ。


新しいプロプレイヤーがいれば、古くからのプロプレイヤーもいる。
三原はその1人に数えていいのではないだろうか。
06年度の世界選手権の準々決勝、マナ計算を間違えたことを理由に千葉ではひたすら弄られ続ける三原だが、忘れてはいけない。
三原は1度は世界の頂点に立った男なのだ。
また、直近のGP仙台ではブライアン・キブラーに敗れたものの、準優勝を果たしている。

もう一度言おう、忘れてはいけない、この男は世界のマジックの頂点に立った男なのだ。

萩原がつい最近見てきた世界を三原は既に数年前に見ている。
経験だけで言えば三原が勝つだろう、しかし萩原の「今」がみてきた世界に期待したい。


仕様デッキ

萩原:ジャンド
三原:徴兵バント


game1
2《終止/Terminate》
1《血編み髪のエルフ/Bloodbraid Elf》
1《瀝青破/Bituminous Blast》
土地3
でキープした萩原、トップから引いた《稲妻/Lightning Bolt》で三原の《極楽鳥/Birds of Paradise》を焼き
さらに《水蓮のコブラ/Lotus Cobra》は《終止/Terminate》で片付ける。

三原も2体目の《水蓮のコブラ/Lotus Cobra》プレイからフェッチランドを経由して《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary》。

萩原は《血編み髪のエルフ/Bloodbraid Elf》から《稲妻/Lightning Bolt》をめくるが既に《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary》は4/4。
討ち取りたいが、《稲妻/Lightning Bolt》では1点足りない。

《大渦の脈動/Maelstrom Pulse》が無いと見た三原は《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary》を追加。
元世界王者が貫禄を見せる。

萩原は2枚目となる《血編み髪のエルフ/Bloodbraid Elf》をプレイ、続唱で《大渦の脈動/Maelstrom Pulse》をめくるが三原は《セジーリのステップ/Sejiri Steppe》で予定調和の回避。

三原はその後《悪斬の天使/Baneslayer Angel》を出して十分の体制に。

この《悪斬の天使/Baneslayer Angel》こそ萩原の《終止/Terminate》で退場するものの、ウォーミングアップを終えた《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary》のバックアップを受けた
2体目の《悪斬の天使/Baneslayer Angel》を止める術を萩原は持たないのだった。

萩原 0-1 三原


game2
2《稲妻/Lightning Bolt》
1《荒廃稲妻/Blightning》
2《森/Forest》
2《新緑の地下墓地/Verdant Catacombs》
1《沼/Swamp》

赤マナが出ない内容のハンドをマリガンした萩原、6枚に減った手札を今度は素直にキープ。

1枚減った手札がどのぐらいゲームに影響を及ぼすのか、非常に興味がある筆者だったが、何故か三原の場に並ぶ3枚の《森/Forest》。
やや不可解な面持ちがらも《血編み髪のエルフ/Bloodbraid Elf》から《荒廃稲妻/Blightning》をプレイして攻撃し始める萩原。

早々に3本目に行こうとするあたり、どうやら三原のマリガンミスだったらしい。


萩原 1-1 三原


game3
《貴族の教主/Noble Hierarch》からスタートした三原、徴兵バントの最速を匂わせるスタート。
しかも萩原は1ターン目にこれを除去できない。

が、三原は2ターン目、《貴族の教主/Noble Hierarch》で攻撃するに留まる。
不思議に思って筆者が手札を覗くと……土地と《悪斬の天使/Baneslayer Angel》《失われたアラーラの君主/Sovereigns of Lost Alara》だけ。

1ターン早く《悪斬の天使/Baneslayer Angel》をプレイするために必須な《貴族の教主/Noble Hierarch》だったが、萩原の《稲妻/Lightning Bolt》で盤面から消え去る。

早くマナ加速を引くんだ三原!!
しかしドローは土地。

萩原が《朽ちゆくヒル/Putrid Leech》を出して楽しそうにパンプアップしつつ攻撃するのを尻目に、三原のドローは

土地
土地
《エルドラージの徴兵/Eldrazi Conscription》

最早失笑ものである。

何とか《悪斬の天使/Baneslayer Angel》《失われたアラーラの君主/Sovereigns of Lost Alara》と展開していく三原だったが、やっと的ができたとばかりに飛んでくる《破滅の刃/Doom Blade》。

とりあえず強そうな《遍歴の騎士、エルズペス/Elspeth, Knight-Errant》を引いたのでプレイするが……
萩原の場にいる《朽ちゆくヒル/Putrid Leech》と《包囲攻撃の司令官/Siege-Gang Commander》。

どう計算してもライフが足りない。



ハギワラ 2-1 ミハラ

ハギワラ優勝おめでとう!!
筆者が覚えているだけでも、大野が決勝のテーブルに座るのはこれで2度目。
前回は小松智史(千葉)に優勝を阻まれ悔しい思いをしているため、今度こそ優勝したいところである。
使用デッキは依然変わらずジャンド。


小松に変わって大野の野望を阻止するため立ちはだかるのは吉森。
GP神戸TOP4にも輝いたことがあり、その際居住地が神奈川であるにも関わらず千葉と書かれたことが記憶に新しい男だ。
その吉森のデッキはエルドラージ覚醒がの目玉クリーチャー《引き裂かれし永劫、エムラクール/Emrakul, the Aeons Torn》を
《召喚の罠/Summoning Trap》から出す、夢と希望があふれる青緑デッキ。
かの有名なシミックの王子が太鼓判を押す色の組み合わせだけに、期待も大きく膨らむところである。


エルドラージの脅威がジャンドに打ち勝つか、ジャンドの続唱が吉森の夢を打ち砕くか。


game1
吉森ダブルマリガン。

すでに減っている手札を大野の《荒廃稲妻/Blightning》連打が追い討ちをかける。

手札が0になった吉森、大野が《血編み髪のエルフ/Bloodbraid Elf》から《芽吹くトリナクス/Sprouting Thrinax》を出したのを見て投了。


大野 1-0 吉森


game2
大野の《芽吹くトリナクス/Sprouting Thrinax》を吉森が《瞬間凍結/Flashfreeze》するところからゲームスタート。
続くターンに吉森は《大貂皮鹿/Great Sable Stag》、大野は《稲妻/Lightning Bolt》で応えて《不屈の自然/Rampant Growth》でマナ加速。

十分なマナがない吉森は《草茂る胸壁/Overgrown Battlement》でマナの調達を図るが、大野の《終止/Terminate》に阻まれる。

《召喚の罠/Summoning Trap》を打つまでの時間を稼ぐべく吉森は《方解石のカミツキガメ/Calcite Snapper》を出す。
大野は《包囲攻撃の司令官/Siege-Gang Commander》《血編み髪のエルフ/Bloodbraid Elf》から《荒廃稲妻/Blightning》と気にも止める様子はない。


マナもライフも手札も無い吉森、少し悔しそうに笑いながら投了。


大野 2-0 吉森


大野優勝おめでとう!!
決勝戦 小松智史 VS 武田浩信


「このマッチアップは『ブラック・アンド・パワフル』の一言に尽きる」

試合開始前、三田村和弥からの一言が飛び出す。
正直、何のことだかさっぱり分からない。

両者の使用デッキはそれぞれ

小松:ボスナヤ
武田:青赤テンポ

となっている。
両者とも黒を使っていない。
何で「ブラック・アンド・パワフル」なんだ……?

ここで筆者は気がついた。
小松のサイドボードには《マラキールの血魔女/Malakir Bloodwitch》が用意されている。
そうか、そういうことか三田村和弥!!

いやしかし、赤緑白で構成されるナヤが黒黒を調達することは可能なのだろうか?
そもそも何故小松のサイドボードに《マラキールの血魔女/Malakir Bloodwitch》が搭載されているのか?

三田村の発言といい、小松のサイドボードといい、分からないこと尽くめである。
読者諸氏はもっと分からないだろうが、とにかく千葉はカオスであるということが伝われば幸いである。


game1
先手の武田は土地2枚と《広がりゆく海/Spreading Seas》3枚を含むハンドをキープ。
予定通り2ターン目に《広がりゆく海/Spreading Seas》で小松の《活発な野生林/Stirring Wildwood》を島にする。

対する小松は《広漠なる変幻地/Terramorphic Expanse》から平地を調達、手札から《森/Forest》を出して武田のデッキのガンである
《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary》を戦場に送り込む。

除去手段を火力に頼る武田にとって、タフネスがどんどん上昇していく《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary》はそれだけで脅威なのだ。

小松の土地を3枚島に変えた武田は上陸した《方解石のカミツキガメ/Calcite Snapper》で攻撃、
《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary》にブロックさせた後《噴出の稲妻/Burst Lightning》でこれを除去する。

2体目の《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary》は《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》でバウンスして時間を稼ぐ。

これをうけて小松は《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos》から《硬鎧の群れ/Scute Mob》と《野生のナカティル/Wild Nacatl》を調達。
質より量プランに変更、《硬鎧の群れ/Scute Mob》を場に追加して武田に除去手段を要求する。

とりあえず《稲妻/Lightning Bolt》で《硬鎧の群れ/Scute Mob》を除去した武田だったが
小松の手札に《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary》があること、《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》で
《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos》を戻したことを考えるとかなり厳しい状況である。

さらなる生物を調達すべくでてきた小松の《イーオスのレインジャー/Ranger of Eos》を《二重否定/Double Negative》した武田、
ブロッカーとして《ジュワー島のスフィンクス/Sphinx of Jwar Isle》をたたせる。

被服がついているため通常の除去は触ることができないクリーチャーだ。

が、それは呪文ならの話。

ここで小松は《石鍛冶の神秘家/Stoneforge Mystic》で《バジリスクの首輪/Basilisk Collar》を調達。
《野生のナカティル/Wild Nacatl》に装備させて《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》を抹殺しにかかる。

《野生のナカティル/Wild Nacatl》と相打ちとなる《ジュワー島のスフィンクス/Sphinx of Jwar Isle》。
スペルでは触れない《ジュワー島のスフィンクス/Sphinx of Jwar Isle》もクリーチャー同士なら触れる。
触れるなら接死が利く。

必死に《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》を守る武田だったが
赤マナが復活した小松が《血編み髪のエルフ/Bloodbraid Elf》を連打するのを見て
《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》と一緒にデッキを片付けた。


小松 1-0 武田


武田いわく、ボスナヤは非常に相性の悪い相手らしい。
マナ加速があること、低マナ域の生物がいること、またそれが強いことこれらがその理由らしい。
しかし武田は準々決勝で同じボスナヤを使う「幻術士増野」を叩き切ってこのテーブルについているのだ。

例え小松がファイナルズ準優勝者だったとしても、ここで負けるのはプライドが許さない。

「せめて、まずは1勝しよう」

ギャラリーの声に軽く頷いてゲームは2本目へ


game2
小松が《野生のナカティル/Wild Nacatl》を出し、武田が小松の《森/Forest》を島に変化させてゲームスタート。
立て続けに武田は《広がりゆく海/Spreading Seas》をプレイ、小松の《活発な野生林/Stirring Wildwood》をまたも島に変える。

土地の枚数が減っているわけではないのに、相手を土地事故に陥らせる不思議なカードだ。

武田は《貴族の教主/Noble Hierarch》を《稲妻/Lightning Bolt》で、《聖遺の騎士/Knight of the Reliquary》を《二重否定/Double Negative》
でそれぞれいなすが、その間小松は1/1の《野生のナカティル/Wild Nacatl》2体でこつこつダメージを与えていく。

そんなゆっくりしたゲームが小松が引いた《乾燥台地/Arid Mesa》で一気に変わる。

そう、ゲームが終わったのだ。
3/3に成長した《野生のナカティル/Wild Nacatl》をまるで止めることができない武田。
苦い顔をしながらも潔く敗北を認めた。


小松 2-0 武田


最後の最後で負けてしまった武田だったが、ジャンドなどの多色デッキが横行している今のスタンダードでは非常に強力なデッキといえるだろう。
そばで見ていて非常に面白いデッキでもあったので、もし興味が沸いた人がいたなら是非試して欲しい。

ともあれ、小松智史優勝おめでとう!!
準決勝 武田浩信VS大野和宏

武田はここ最近まで「安産型プレイヤー」として周囲に弄られていた。

安産型プレイヤーってなにそれ?

大抵の人はそう思うだろう。


こんな会話をしたことは無いだろうか?
トーナメントの4回戦目終了時、友人に今の成績を聞かれて
「《ルーン爪の熊/Runeclaw Bear》だよ」とあなたは答える。
これはつまり今の成績が2-2、2勝2敗であることを示している。
もし3勝1敗なら所謂頭でっかちになり、1勝3敗ならお尻でっかち、となる。

お尻が大きい=安産型 

というおばあちゃんの知恵袋的助産婦さんの古い言葉。
この2つが合わさることで持つ意味はつまり

安産型プレイヤー=負けこんでいるプレイヤー

という意味だ。

だがそれも過去の話。
武田は今のデッキを使い始めてからは頭でっかちなのだ。
そんな武田が使うのは《広がりゆく海/Spreading Seas》《ゴブリンの廃墟飛ばし/Goblin Ruinblaster》で相手の行動を制限し
《方解石のカミツキガメ/Calcite Snapper》《ジュワー島のスフィンクス/Sphinx of Jwar Isle》といった被服クリーチャーで攻撃する
という青赤ポンザに近いデッキ。

対する大野は説明不要なジャンドを使用。
同系対決を見越してか、メインボードに《精神腐敗/Mind Rot》が1枚さされているのが特徴的だ。
ジャンドは何が相手でも五分に戦えるデッキであるが、武田ポンザに対してどんなゲームを見せてくれるのか。


game1

先手を取った武田、元気よくマリガンを宣言。
1枚減って6枚のハンドでスタートした武田は《ハリマーの深み/Halimar Depths》でトップを確認。
手札に抱えている《広がりゆく海/Spreading Seas》を2ターン目にプレイしたいところだが
手札にはタップインランドしかなく、《ハリマーの深み/Halimar Depths》で確認した中にもアンタップインできる土地は無い。
2ターン目に《広がりゆく海/Spreading Seas》が使えないことが分かると苦い顔をする。
仕方ないとは口にせず、《広漠なる変幻地/Terramorphic Expanse》で山札の上をリフレッシュする。

この隙に《朽ちゆくヒル/Putrid Leech》が出せれば相当有利になる大野だったが、世の中そう上手くはいかないようだ。

《朽ちゆくヒル/Putrid Leech》が出ないことに胸を撫で下ろした武田、2ターン続けて《広がりゆく海/Spreading Seas》をプレイ
大野の《怒り狂う山峡/Raging Ravine》を2枚とも青マナ供給源へと変化させる。

色マナ事故に陥っている大野は苦しそうに《精神腐敗/Mind Rot》をプレイ。
武田の手札から《稲妻/Lightning Bolt》《噴出の稲妻/Burst Lightning》を落とすが
プレイする対象がいない除去を捨てたに過ぎない武田にすれば大して痛くも無いだろう。

クリーチャーがプレイできない大野を傍目に武田は《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》を場に出す。
この《精神を刻む者、ジェイス/Jace, the Mind Sculptor》が《方解石のカミツキガメ/Calcite Snapper》と
《ゴブリンの廃墟飛ばし/Goblin Ruinblaster》を武田にもたらす。

土地が3枚で止まっている上、青マナしか出ない大野は次のゲームに向けて気持ちを切り替えることにした。


武田 1-0 大野


game2

マリガンを宣言した後大野は

《強迫/Duress》
《精神腐敗/Mind Rot》
《血編み髪のエルフ/Bloodbraid Elf》
《若き群れのドラゴン/Broodmate Dragon》
土地2枚

という内容の手札をキープ。
2ターン目の《広がりゆく海/Spreading Seas》を防ぐプランのようだ。

予定通り大野は2ターン目に《強迫/Duress》をプレイ。
しかし幸か不幸か武田の手札に《広がりゆく海/Spreading Seas》は無い。
続唱をつむジャンドにとってガンとなる《二重否定/Double Negative》を墓地に送り込んで《強迫/Duress》の役割は終了。

この後も大野は《荒廃稲妻/Blightning》《精神腐敗/Mind Rot》と手札破壊を連打。

武田も負けずに《ゴブリンの廃墟飛ばし/Goblin Ruinblaster》で大野の《怒り狂う山峡/Raging Ravine》を破壊する。
折角破壊した《怒り狂う山峡/Raging Ravine》だったが、大野はすぐさま《怒り狂う山峡/Raging Ravine》を引き当てる。
次のターンには《血編み髪のエルフ/Bloodbraid Elf》をプレイ、続唱で《不屈の自然/Rampant Growth》を唱えてマナベースを安定させにかかる。

ここに武田の《二重否定/Double Negative》が突き刺さる。
さらに武田は大野の《思考の大出血/Thought Hemorrhage》を《急転回/Swerve》でいなし
その間コツコツと《ゴブリンの廃墟飛ばし/Goblin Ruinblaster》でダメージを与え続ける。

だがそこはジャンド。
土地さえあれば逆転などいつでもできるのだ。

大野は《若き群れのドラゴン/Broodmate Dragon》で流れを一気に引き込む。

対処手段が無い武田、手札の《地震/Earthquake》をじーっと見た後負けを認めた。


武田 1-1 大野


game3
両者マリガンなくスタート

武田が大野の《野蛮な地/Savage Lands》を島に変えるところからゲームスタート。
大野は《強迫/Duress》でこれ以上土地を縛られることを防ごうとするが、武田の手札にあるのは《強迫/Duress》で落とせない《ゴブリンの廃墟飛ばし/Goblin Ruinblaster》。
しぶしぶ《地震/Earthquake》を落とす。
武田は予定通り《ゴブリンの廃墟飛ばし/Goblin Ruinblaster》で《竜髑髏の山頂/Dragonskull Summit》を破壊、大野を窮地へとおいやる。

一度は土地が止まった大野だったが《新緑の地下墓地/Verdant Catacombs》を引き当て《不屈の自然/Rampant Growth》をプレイし、色マナを安定させる。

しかしこの1ターンが命取り。
この1ターンの間に武田は2枚目の《広がりゆく海/Spreading Seas》を手にいれ、大野がやっとの思いで手に入れた《森/Forest》を《島/Island》へと変化させ
《思考の大出血/Thought Hemorrhage》で《精神の制御/Mind Control》を2枚手札から除かれるのも意に介さず《ジュワー島のスフィンクス/Sphinx of Jwar Isle》を場に出す。

大野が逆転するより早くゲームを決めた。


武田 2-1 大野

武田浩信WIN!!

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